市内正岡町のクロスモール豊川、DMCカーマ正岡店内にある「ゆずの木どうぶつクリニック」。イヌやネコだけでなく、ウサギ、ハムスター、フェレットなど、幅広い診察ができる市内では数少ない動物病院だ。開業5年目。獣医師の越智俊二郎さんは、飼い主さんとペットに寄り添った医療を提供している。
越智さんは愛媛県出身。実家は農家で、ヘビやカエル、アナグマなど野生動物が現れるような自然豊かな地域で育った。イヌやネコの飼育も経験し、「いつか動物にかかわる仕事がしたい」と考えるようになった。動物好きに加え、動物の体の構造に興味があったことなどから、獣医になることを決意。神奈川県にある大学で獣医学を学び、卒業後は愛知県安城市にあるあいち犬猫医療センターに勤務し、その後、関西の病院で高度医療などの腕も磨いた。
プライベートでは、あいち犬猫医療センターで知り合った動物看護師さんと結婚。愛知県岡崎市出身の妻の実家に近い場所での開業を目指していた越智さんは、先輩獣医師からの情報提供が縁で、2018年8月に豊川市内でクリニックをオープン。開業に際しては、市と関係機関が連携して創業をサポートする「とよかわ創業・起業支援ネットワーク」事業を活用した。市の補助金を利用して医療機器を購入。商工会議所や豊川信用金庫の支えもあり、開業準備は順調にすすんだ。「なによりもうれしかったのは、このような制度があるということ。私のように豊川に縁がない人間でも、受け入れてもらえるんだって。精神的な不安が消えました」。
豊川市に住んでみて実感することは、土地柄が良い、住みよいまちだということ。「これまでに暮らしたことがある土地と比べても、穏やかで優しい人たちが多い。2人の子どもを持つ父親としても、子育てしながら腰を据えるのにはもってこいの環境」。また、山あり川あり海ありと自然が豊かで、それでいて買い物などができるエリアが近いことにも満足しているという。中でも特に好きな場所は、赤塚山公園などの公園と、中央図書館。近隣では、新城総合公園もお気に入りだ。
「あと豊川市に移住・開業して感じることは、事業をしやすい土地だということ。人口の割に競合が少ない。チェーン店だけが目立つのはもったいないと思うんですよね」と越智さん。「豊川の魅力を一言で伝えるのは難しいんですが、いろいろなバランスが良い。とにかく住んでみればわかります!」
診療時間には絶えず来院があり、入院している動物の容態次第では24時間体制で対応。越智さんは「獣医は体力勝負です」と笑いつつ、こう話す。「『ゆずの木』というネーミングは、子どもの頃に庭にあったユズの木が由来。記憶にある柔らかな感じを病院の名前にしました。」そのイメージのまま、人にも動物にも優しい動物病院であり続けることをモットーに、地域の人や動物の幸せを支えていく。