伝統文化の生け花の魅力を、若い世代に発信している「IKENOBOYS(イケノボーイズ)」。日本最古の流派ともいわれる生け花「池坊」(本部・京都市)の男性華道家のグループだ。現在のメンバーは、全国各地から集まった2、30代の16人ほど。そのひとりが豊川市御油町に住む田中伸明さんだ。
イケノボーイズには、大学生や僧侶、建築士、声優など、さまざまな肩書の男性が所属しており、田中さんも本業は大工さん。そんな田中さんが華道に興味を持ったのは、前職の造園会社の社員時代だ。勉強を兼ねてたびたび訪れた京都で、庭園にあった茶室の優雅さに惹かれたという。それをきっかけに茶道と華道(池坊)を習い始め、それまで全く関心がなかった草花の美しさに魅せられた。「華道に夢中になりました」。田中さんは自身の作品や活動をSNS投稿。後に、それがイケノボーイズの関係者の目に留まり、2018年にメンバーに抜擢された。
グループメンバーは本部がある京都を拠点に、池坊の広告塔として活動。イベントでのパフォーマンス披露やワークショップ開催、メディア出演など、幅広く活躍している。田中さんもこれまで、アイドルグループとのコラボや、東京五輪に関するイベントなどにも参加した。2022年は京都市清水寺経堂で行われた「うつわ男子×IKENOBOYS展」や、同市八坂倶楽部「令和京都博覧会」などでも生け花を披露した。
地元では、三河国分尼寺跡史跡公園で毎年9月に開かれている「天平ロマンの夕べ」(市教育委員会主催)で、2021年から華道を披露。新型コロナによって規模が縮小されていた行事に、文字通り花を添えた。田中さんは、自分が持っている大きな青磁の器を持ち込み、豊川特産のスプレーマム100本などを使った優美な作品を制作した。作品は光に映し出され、来場者たちを魅了。「古風な、歴史を感じる作品にしようと思いました。皆さんに喜んでもらえてよかったです」。
さらにイケノボーイズを離れた個人の活動として、市内小学校の子ども会が開いた、七夕のワークショップの講師に招かれた。総勢40人の子どもたちが田中さんの指導で、ササやアジサイを使った作品を制作。夢中になってくれた男の子たちも多く、純粋に楽しんでもらえたという手ごたえを感じた。
田中さんは大工仕事とイケノボーイズの活動のかたわら、自宅で華道教室も始めた。SNSなどを通じて、遠方から訪ねてくる人もいるという。「華道は敷居が高いと思われがちですが、そんなことはありません。『テレビの横にちょっと飾ろうかな』くらいの気軽な気持ちでいいんです」。
「花を生ける時のこだわりは、花のいい表情を見つけること。より生き生きとした姿に映るようにしてあげること」と田中さん。「コロナ禍で人と会えなくても、仕事でストレスが溜まっても、自分一人で心と身体の疲れをリセットできるのが華道の魅力。もっと地元でも認知してもらい、生け花の良さを伝えていけたらと思っています」。
「田中伸明いけばな教場 三州雪月花」HP
https://ikebanasetsugekka.crayonsite.com/