動画共有サイト「YouTube」の人気チャンネル「OKUDAIRA BASE」(オクダイラベース)。豊川市出身の奥平眞司さんは一般的な20代男性らしからぬ丁寧な暮らしぶりを発信し、現在チャンネル登録者数は36万人。「暮らし系YouTuber」として、世代を超えて親しまれ、今や芸能界にもファンがいるほど。そんな奥平さんはなぜYouTuberになったのか。
奥平さんは4人兄弟の長男。YouTubeの映像から受けるおっとりとした印象と違って、体を動かすことが大好きな少年だった。地元の赤塚山公園や本宮山にもよく出かけ、野球などのスポーツにも夢中になった。今では日々の暮らしを楽しむスペシャリストとして知られているが、実家にいたころは家のことが好きではなかった。「長男だったので、頼まれれば仕方なくやっていた感じです」。ただ肌荒れしたのがきっかけで、食の安全や栄養については関心があった。高校時代には自分が納得する弁当を手作りしていた。また父親ゆずりの工作好きで、小さいころは段ボールの家づくりが得意だった。なかでも一番好きだったのは家の模様替え。家族も協力的で、たびたび行った。これらの経験のすべてが、のちの生活に役立つことになった。
暮らしのことに関心を持ったのは、大学進学で一人暮らしを始め、家のことが「自分ごと」になってから。大学は海と山に囲まれたのどかな地域にあり、大学生らしい遊び場が少なかった。必然的に部屋で過ごす時間が長くなり、まずはインテリアに凝った。近くの砂浜から持ち帰った流木でライトスタンドを作り、DIYにハマっていった。部屋のようすをインスタグラムなどで発信してみると、インテリアの専門誌に取り上げられたり、大学の後輩たちの間でも流木のDIYが流行ったりして、より楽しくなった。料理に関しては基本的に自炊。食費に余裕がなかったし、外食ばかりだと体調などが心配だったからだ。それを友人などに振る舞うと好評で、それから手料理にもハマった。
こうして暮らしの楽しさに目覚め、道具などにも興味を持つようになり、「暮らしにかかわるデザインがしたい」と強く思うようになった。大学で学んでいたのはまったく畑違いの福祉。家族を説得し、卒業後はアルバイトをしながらデザインの専門学校で学んだ。趣味のひとつとして、入学と同時に始めたYouTubeで、動画がヒットしたのは卒業間近のこと。朝起きてから夜寝るまでの日常をストーリー仕立てにしてアップし、それが10万回再生を記録、いわゆるバズった。卒業後もそのスタイルで衣食住のことを配信。チャンネル登録数もどんどん増えた。そこからYouTuberを職業として意識するようになった。
現在は古民家で暮らし、大好きな模様替えやDIY、料理、庭仕事、おもてなしのようすなどの日常を、心地よい音楽にのせて紹介。企業から映像の仕事も舞い込み、さらに自分がデザインした、こだわりのキッチン道具などを扱うブランド「Kiduki(きづき)」が生まれた。そんな中、2021年には、同じく暮らし系YouTuberのmami(まみ)さんと結婚。夫婦チャンネルも開設した。趣味のスキムボードでは優勝するほどの腕前で、近くの海でほぼ毎朝練習に励む。
2023年4月に豊川市赤塚山公園のリニューアルオープンイベントがあり、トークショーのゲストとして招かれた奥平さんは、「豊川は自然がいっぱい。それでいて都会的な部分もあり、住みやすい場所なので大好き。僕が今住んでいるまち(関東)と似ているんですよね」などと、豊川愛を披露。駆けつけた家族やYouTuber仲間に囲まれて、地元で初めてのイベント出演を楽しんだ。
実家に帰るたびに、家具の配置が変わっていたり、実家でたこ焼き屋「おくたこ」を営む母・幸代さんの手料理がおいしいことを実感したりして、「やっぱり今の自分の原点は奥平家にあるんだなあ」とつくづく思う奥平さん。「もともとYouTuberになるなんて、思ってもいませんでした。好きなことをやり続けて今があること、たくさんの人たちに出会えたことに感謝です。これからも年齢に関係なく多くの人にYouTubeを見てもらい、その人の”何か“が変わるきっかけになればいいなあと願っています」。