豊川市出身で、とよかわ広報大使である俳優の渡辺いっけいさんが主演を務める映画「マリッジカウンセラー」。いっけいさんをはじめ、松本若菜さん、宮崎美子さんが結婚相談所の仲人を演じ、個性的な男女を結婚に導くハートフルコメディだ。撮影は豊川市千両町の古民家を中心に、愛知県内6市(豊川市、岡崎市、蒲郡市、西尾市、豊田市、豊橋市)で撮影された。スクリーンのあちらこちらに豊川市の魅力的な場所やモノが登場し、市のPRにも一役買っている。前田直樹監督とプロデューサーの山﨑歩さんは「市民の皆さんと一緒に作り上げた映画。自分たちの映画と思ってもらえたら」と笑顔で話す。
前田直樹監督は愛知県刈谷市出身。スポーツ好きの普通の少年だった。映像の魅力に目覚めたのは名古屋市立大学2年生の時。建築都市デザインを学ぶ中で模型映像制作に触れたのがきっかけだ。卒業後はテレビCM制作会社を経て、イギリスへ。現地で商業監督デビューし、帰国後は映画やドラマなどで幅広く活躍している。マリッジカウンセラーは、監督初の本格的な劇場長編映画だ。一方、前田監督と二人三脚で映画を作り上げたプロデューサーの山﨑さんは北海道生まれ。前田監督と同じく大学在学中に映像制作に興味を持った。イベント企画などをするサークルで活動したのがきっかけ。大学を辞めてアメリカへ渡り、動画編集やサウンドデザインなどを学んで帰国し、会社を立ち上げた。
マリッジカウンセラーは、プロデューサーである山﨑さんが、たまたまプライベートで結婚相談所を開きたいという人と出会ったのがきっかけ。それまであまり興味がなかった仲人の世界をのぞき、「面白いストーリーができると思いました」と山﨑さん。「『結婚っていいな』と思うようなハートフルコメディー」をテーマに企画し、前田監督に呼びかけてプロジェクトがスタートした。
ロケ地は当初、関東地域を想定していたが、映画で重要なシーンが繰り広げられるイメージ通りのペデストリアンデッキを愛知県内で見つけたことなどがあり、県内でのロケを決定。「ストーリーの中心になる古民家は、豊川市のイベントスペース『千両宝辺』(せんりょうほうべ)に。他市からも候補を出してもらいましたが、人が住んでいて生活の匂いがあることなど、総合的に判断してここに決めさせてもらいました。主役のいっけいさんの故郷ということも知り、より盛り上がるんじゃないかという期待もありましたね」。
ロケは2021年10月、約3週間にわたって行われた。豊川市内では、千両宝辺をはじめ、市防災センター、砥鹿神社や豊川稲荷表参道、名鉄諏訪駅、御油の松並木、マンション「サンメゾン豊川稲荷サウス」、サーラプラザ豊川などで撮影があり、それらの場所が映画の中で効果的に使われている。また豊川市宣伝部長「いなりん」の人形や、名菓「宝珠まんじゅう」「黒松」などもさりげなく登場。映画のクライマックスであるプロポーズシーンでは、とよかわバラの品種の1つ「サムライ」が感動に彩りを添えている。
前田監督は「豊川市の印象は地元愛の強さ。皆さん温かく私たちを迎えてくれました。ロケの合間に地元の方とした雑談も楽しかったですね。あと、市内の色々なお店が日替わりで届けてくれたロケ弁も力になりました」と振り返る。帰京後に撮影当時のロケスタッフ同士が違う作品の現場で再会した時、「前田組の豊川弁当おいしかったですよね」と話題になったそう。 「映画が完成して思うことは、主人公の赤羽はいっけいさんしか演じられなかったということ。昭和のおやじが、かわいいチャーミングなおじさんに変わっていく様を見せてくれました。」 一方の山﨑さんは「行政や観光協会、JAさんなど、豊川の皆さんに盛り上げてもらいました。1つのシーンのためにバラの花束を何度も取り換えてもらったり、市外のロケにもかかわらず、バーベキューシーンの肉が足りなくなった時にも、豊川市観光協会がSOSに応えてくれ、快く届けてくれたり。本当に感謝しかありません」と語る。
前田監督と山﨑さんは「ヒットしたら続編でまた豊川に戻ってきます。その時はまた多くの方々にプロジェクトに参加してもらいたいですね」と期待を寄せている。