世代を超え、誰でも楽しめるトランプゲーム「大富豪」。スマホゲームなどが普及した現代でもなお、このアナログなゲームに夢中になる人たちがいる。2023年11月に名古屋市内で開かれた、大富豪日本一を決める第7回「天下一大富豪大会」(日本大富豪連盟主催)には、各地の予選を含めて326人が出場した。この大会で優勝したのは豊川市在住の会社員、高下直樹さん。実力だけでなく運も必要となるこのカードゲームの大会で、過去7回のうち3回も優勝しているのは高下さんただひとり。今現在、天下一を更新中だ。
初出場は2012年の夏。高下さんが社会人1年目の年だ。すると、いきなり100人以上の頂点に立った。地域によっていろいろなルールがある大富豪だが、同大会では、連盟が定めた統一ルールで勝負。4人一組で繰り返しプレイし、総合得点の高い2人が勝ち上がって次の対戦に進むトーナメント方式で行われた。
ここから毎年大会に参加するようになり、第5回、直近の第7回大会でも優勝。第7回大会では3時間以上休憩なしで全36ゲームを戦った。「疲れはしますが、好きなことなので楽しいですし、集中力は途切れません」。勝利のコツは、カードが配られたら最初に目指す順位を決めること。カードの内容によって挽回の余地がない時は、強い人を早く上がらせて、2番を目指し、トータル点数で勝負する。「この勝負勘みたいなものは、大富豪に夢中になった高校の時に身についたのかもしれません」。高下さんは朝の情報番組「ラヴィット!」で腕前を披露するなど、大富豪を広める活動も担っている。
高下さんが大富豪をやり始めたのは小学生の時。3つ上の兄から教わった。中学時代はほとんどする機会がなく、火が付いたのは高校生の時。息の合う友人と、たまたま大富豪をしてハマった。特に3年生の大学受験の勉強期には、それが絶好の息抜きになった。時間さえあれば仲良し3人組で大富豪に夢中。「大きな声では言えませんが、泊りで受験勉強するつもりで友人宅に集まり、結局徹夜で大富豪なんてこともありましたね(笑)。ただ、今の実力はこの時代に培われたものだと思います。それ以降は、ここまで練習する機会もあまりなくて」。
静岡大学工学部に入学したのを機に、中高を過ごした香川県から静岡県浜松市に。「僕はもともと物事をロジカルに考える性分。それが大富豪で勝つためには必要です。そういった意味では理系の考え方はプレイに役立っているのかな。まあ強い人は皆さんそうだと思いますが」。そんな中、高下さんが大学4年生の時、「天下一大富豪大会」が始まったことを知り、社会人になったタイミングで参加。以降、連続出場を続けている。
高下さんは2017年に結婚。当時暮らしていた春日井市から2023年、豊川市に移住した。職場は名古屋市内だが、新型コロナウイルス感染症を経てリモートでの仕事が増えたことや妻の実家が浜松市であることなどから、職場と実家の両方から程よい距離にある三河地区に家を建てることを決めた。「各市町村を検討しましたが、自分の理想に一番近い土地が見つかったのが豊川でした」。利便性が良く、土地代も手ごろ。市内にイオンモールができたのも、決定材料として大きかった。新居の完成は2024年秋ごろだが、先駆けて移住。妻と5歳の長女と、家族3人でアパート暮らしをしている。昨年夏には公共バスに乗り、陸上競技場で開かれた花火大会に出かけて楽しんだ。「このような大きなイベントが、混みすぎず、ちょうどいい感じなのも気に入りました」。
今後も大会に出場していく予定だという高下さん。「大会の参加者は、共通の趣味を持つ特別な存在。年に一度しか会わなくても、まるで古くからの友人のように打ち解けられるのがうれしい。我が家の娘は頭を使うことが好きみたいなので、いずれは一緒に大富豪をやりたいなと思います。豊川でも大富豪イベントがあれば協力したいですね」。
【大富豪】
大富豪はトランプゲームのひとつ。配られた持ち札を出し合って、手持ちのカードを早くなくすことを争う。プレイヤーは順番に強いカードを出し、最初にカードをなくした人が大富豪となる。戦略と運が重要な楽しいカードゲーム。日本大富豪連盟は、各地でばらつきがあるルールを統一し、このゲームを普及させることを目標に活動している。