豊川市内にある農畜産物直売所「グリーンセンター」。市民だけにとどまらず、レストランのシェフなども市外や県外から訪れる人気のお店だ。店内にはバラエティに富んだ旬の朝採り野菜や果物、花、加工品などがずらり。商品の新鮮さと安さが評判で、来店客の賑わいは途切れることがない。その人気の秘訣と魅力を、運営するJAひまわり直販課の小野田剛課長と、産直の中心的存在である「グリーンセンター豊川」の後藤泰裕店長に聞いた。
同JAの人気の大きな理由は品ぞろえの豊富さ。市内の生産者の大部分は小規模農家で、特徴は多品目少量栽培。そのため同種の野菜ばかりが売り場面積を占めるということがなく、常に多種類が並ぶ。さらに目新しい野菜や、ここでしか買えない「ひまわりブランド」の作物などもあり、それらを目当てに訪れる客も。「農家さんの中には、自分で新品種のタネを買って育てるような向上心の高い人もいて、頼もしい」と小野田さん。新品種の導入は、農家からの働きかけもあれば、JA側から評判の良さそうな種を農家に提供することもあるという。またスイートコーン「とうき美人」のように、JAの営農指導員と生産者が手を取り合ってブランド化する試みにも力を入れている。農家の出荷規模は、年収数万円から1000万円を超える人までさまざま。「ただ規模に関わらず、農家さんたちは農薬残量などの出荷基準をクリアしなければ、販売できない仕組みになっています」。
今でこそ全国に広がっている産直だが、先駆けはこの地域と言われている。はじまりは1986年。市町村が合併する前の旧三河一宮農協女性部の人たちが、地元で野天の100円市をスタート。形や大きさが不ぞろいな野菜や、手作りの加工品などを販売すると、これが評判となって広がっていった。それを受けてJAは事業化に乗り出し、グリーンセンターの一宮、音羽、豊川が次々にオープン。女性農家が出荷した。2016年には男性農家も出荷できるように間口を広げ、市内産直は現在6店舗、当初50人だった登録農家は約1300人になった。新型コロナ感染症発生前の2018年には全店舗の総計で、農家の出荷品の販売金額が約16億円と、過去最高額を達成。グリーンセンター豊川もこの10年間、売り上げは右肩上がり。コロナ期間も巣ごもり需要から、過去最高額を売り上げた。「赤字の産直が多い中、頑張った。売れれば農家はもっと頑張る。頑張れば、より売れて儲かる…という好循環。その結果、店内商品の回転も良くなり、一日中、新鮮なものが店に並ぶんです」と小野田さん。
グリーンセンター豊川は2021年度、JAあいち経済連が約50店のJA産直を対象にした表彰で、最優秀賞を受賞した。県内農家の売り上げ伸び率や経営状況などで総合的に評価された。小野田さんは今後について「JAひまわりオリジナルブランドをもっと増やしていきたい。あとは農家の顔が見えるようなイベントをもっと開きたいですね」と語り、後藤さんは「原油や肥料価格の高騰など農家を取り巻く環境は年々厳しくなっていますが、農家さんの思いを消費者に伝えることに最善を尽くして、少しでも多く売れるように私たちも頑張っていきます」と意気込んだ。