鉄道車両製造を中心とする日本最古の車両製造会社「日本車輌製造株式会社」(本社・名古屋市)。1896年に創業し、128年の歴史があり、新幹線製造ではトップシェアを誇っている。事業の要である鉄道車両を製造しているのは、豊川市穂ノ原にある「豊川製作所」だ。全従業員の約半数である1230人が勤め、開発・設計・製造に携わっている。女性の活躍推進に取り組む企業が増えるなか、日本車両でも女性が働きやすい職場環境が整備され、多くの女性社員が活躍。男性も女性も生き生きと仕事をしている。その一人、鉄道車両本部管理部管理統括グループ上席主任の花井雅さんに話を聞いた。
---小牧市出身。大学は、外国語学部でスペイン語を勉強し、スペイン留学の経験もある。語学力を活かした、グローバルな仕事がしたいと考え、卒業後の2015年、日本車両に入社した。研修を経て、豊川製作所にある鉄道車両本部の海外プロジェクト部に配属された。さっそく大学時代の希望が叶い、海外に関わる仕事につけた。おもな業務は、車両を受注してから納品・入金するまでの、一連のプロジェクト管理。通常数年かかる事業の進行中、客先にプロジェクトの進捗報告をしたり、課題の解決方法を社内でとりまとめ、客先と交渉したりする仕事だ。「会社とお客さまをつなぐ窓口のような役目。鉄道車両の技術的な知識を勉強中だったうえに、英語でのやりとりなので大変でした。ただそれ以上に、各部署のスペシャリストたちと協力し合ってプロジェクトを成功させることは大きなやりがいでした」。
時には、現場に出向くこともあった。2018年に納入した米カリフォルニア州のSMART(ソノマ郡とマリン郡を結ぶ通勤鉄道)向け気動車や、2020年に納入した米イリノイ州のMetra(シカゴおよびその近郊を結ぶ通勤鉄道)向け客車のプロジェクトでは、車両の搬入に立ち会った。自分もアメリカの乗客たちに紛れて乗車し、彼らが喜ぶ顔を直接見られた時は本当に感慨深かった。約5年を海外プロジェクト部で過ごし、3年前に管理部管理統括グループに異動。鉄道車両本部全体の、中長期受注計画の策定という重要業務に携わっている。「本部方針決定の一端を担う業務をしており、本部の経営に直接関われるところに大きなやりがいを感じています」。
仕事が安心してできるのは、社員同士の関係の良さに加えて、女性が働きやすい制度の充実が大きい。産前産後休暇はもちろん、育児休業は最長で子どもが満2歳まで延長できる。男性も約3割が育児休業を取得している。そのほか、育児短時間勤務制度や、子どもの看護休暇もある。これらの制度充実の甲斐もあって、入社当時の2015年に比べ、ここ数年で女性社員が急増した。
2017年に社内結婚し、現在は1歳半の娘と3人で職場の近くに暮らしている。特に助かっているのは、出社退社時間を自分で決める、フレックスタイム制度だ。保育園の送り迎えは夫婦2人で協力している。登園は夫に担当してもらい、帰園は自分が担当。そのため、勤務時間を午前7時から午後4時としている。制度は子育てだけに限らず、介護などで使う人もおり、もちろん男性も活用している。さらに子どもが小学6年までは時短勤務の制度も利用可能だ。その制度を活用し、この4月に復帰してしばらくは時短勤務をした。夫も1年間の育休を取った。上司が快諾してくれ、ありがたかった。「男性の育休取得もどんどん増えていますが、赤ちゃんとの貴重な時間と育児に充てることができ、私たち夫婦はすごくよかったと思っていますし、私自身のスムーズな職場復帰にも繋がりました。職場復帰に意欲のある女性のためにも、育休を取得する男性がもっと増えると良いと思います」。
豊川は自然も多く、生活には便利で、住みやすいところ。休日には、家族でイオンモール豊川に行ったり、豊川公園や赤塚山公園などに出かけたりすることもある。また春には桜トンネルや佐奈川などに出向き、きれいな桜を楽しんでいる。「育休中には、豊川オープンカレッジで開講している『産後ママのヨガ』に娘と一緒に通い、楽しくリフレッシュできました。いつか市内に、私の出身地の小牧市にある「こまきこども未来館」のような、大きな室内遊戯施設ができたらいいな」。