県外のファンも訪れる、豊川市内のフォトスタジオ「ライフスタジオ豊川」。経営する株式会社ラヴレターズ代表の林真梨さんはフォトグラファーとしてだけでなく、女性起業家としても目覚ましい活躍をみせている。2022年度は、道を切り開いた女性たちの手記を集めた書籍「わたしが掴んだONE CHANCE」(Rashisa出版)の著者の一人に抜擢され、さらに日本商工会議所が主催する「第21回 女性起業家大賞・グロース部門」(創業5年以上10年以内)特別賞を受賞。女性活躍や地域活性化への貢献が決め手となった。
林さんは岐阜市出身で、名古屋などでフォトグラファーとして活動。「写真で街と人を元気にしたい」と、愛知県内で開業場所を探し、たどり着いたのは全く土地勘がなかった豊川市の豊川稲荷門前。市が主催する空き家ツアーなどを活用し、風情ある雰囲気の表参道でイメージにぴったりの空き家を見つけた。知識がなかった開業に関しては、豊川商工会議所に助けられた。
店の内装は仲間とともにセルフリノベーション。汗だくで毎日作業をするうちに、門前のお年寄りなどが声をかけてくれるようになった。「私には子どもが2人いて、当時は保育園児と小学生。その子たちが出入りしていたので、気にしてくれたんでしょうね」。林さんはオープンを待つことなく、門前の人たちの温かさに触れることになる。こうして数か月後、白を主体とした写真映えする空間が完成し、2017年、豊川稲荷表参道に「スタジオアマレット」をオープンさせた。
林さんのスタジオは単なる写真販売ではなく、スタジオを貸し切りにすることで、そこで過ごす家族の時間を大切にしている。素敵な衣装やインテリア、写真データを即日提供するスタイルなどが好評で、月に100組以上が訪れる人気店となった。店のオープンは、若いファミリー世代の人たちが門前の商店街を訪れるきっかけになっている。「リラックスした雰囲気の中で撮影は進みます。撮影後は、ご夫婦で手をつないで写真データを見てもらうんですよ。はじめは照れ臭そうですけど」。そうして写真を見ることで、家族の結びつきを実感して涙を流す人もいるという。
スタッフは女性ばかり7人。林さんにとって、女性たちが活躍できる場所づくりも大切なテーマで、家庭と仕事が両立できるような環境を整えている。「私にとってスタッフたちはとても頼りになる存在。おかげで運営の仕事に集中できますし、商工会議所や企業、学校などに呼ばれて、創業などの講師として出向く機会も増えました」。
事業はこの秋さらなる広がりを見せ、10月には静岡県浜松市に2店舗目となる「ライフスタジオ浜松店」をオープン。かねてより協力体制にあったライフスタジオ(株式会社アップルツリーファクトリー)に参画。豊川のスタジオも「ライフスタジオ豊川店」へと生まれ変わった。
「豊川の人は、田舎ということをネガティブにとらえている人が多い気がします。海なし県と呼ばれる岐阜で育った私にとっては、山も海もあること自体が財産。私はこの豊川から事業をスタートさせて本当に良かったと思っています。人と人の交流の素晴らしさも教えてくれました」と豊川の魅力を語ってくれました。