豊川市一宮町の砥鹿神社で、夏休みなどを中心に開催されている大規模マルシェ「とが楽市」。こだわりの飲食やおしゃれな雑貨のお店などが数多く出店し、ライブやパフォーマンスなど趣向を凝らした演出も魅力の人気イベントだ。企画・運営を行っているのは、市民参加型マルシェ実行委員会の代表・丸山英昭さんだ。
丸山さんの実家は、祖父、父と2代続くアルミ鋳物工場。家族は忙しく、小さな頃から工場の資材で秘密基地を作ったりして一人で過ごすことが多かった。夢は誰もが笑顔になれる「おもちゃ屋さん」だった。
中学は休みがちだったことなどもあり、地元高校への進学はあきらめ、西三河の学校のビジネス科に入学。コンピューター・プログラミングなどを学んだ。卒業後、一度は家業の鋳物会社に入ったが、仕事が合わず、家電量販店に就職。そこでパソコンを購入してインターネットに夢中になった。当時は一宮町(宝飯郡)と豊川市の合併が決まった頃。地元の一宮が消えてしまうのではと、危機感を抱いた丸山さんは、仲間とともに一宮の魅力を発信するホームページ(以下、HP)を立ち上げた。その活動がきっかけとなって豊川市観光協会のHPの作成依頼を受けるように。そこから約8年は観光案内所のスタッフをしながら、HPの企画や運営に携わった。
観光協会の活動を通して、民間主導でも豊川市を盛り上げることが必要だと実感。たまたまテレビで見たキッチンカーにピンときた。「これで各地のイベントに行けば、豊川市をPRできるし、仕事として稼ぐこともできる」。丸山さんは2017年、「豊川いなり寿司」「豊川いなりうどん」「こざかいホルモンから揚げ」など、豊川市の名物を調理・販売する地域発信型のキッチンカー「このまち食堂」を開業。市内外のイベントに精力的に出店した。
翌年には、丸山さん企画のマルシェ「~とが楽市~しかファミリー」を砥鹿神社の境内でスタート。最初はコーヒー店など4ブースで始めたマルシェだったが、今や若い世代も巻き込んだ人気イベントになった。夏・冬休みには、約100店舗が出店し、ファミリー世代で賑わう拡大版が開かれている。ただイベントが大きくなればなるほど、運営代表者としての悩みも大きくなった。「もともと一人遊びが好きで、一人でいることが好きだった僕が、大勢の出店者をまとめなくちゃいけない。これ、結構大変です。もし来場者が少なければ売り上げも出ないし、プレッシャーもあります。ただ無事にイベントが開催できて、来てくれた人たちの喜ぶ顔を見れた時の達成感がたまらないんです」。子どもの頃に夢見たおもちゃ屋さんとイベント開催を重ね合わせた。「みんなを笑顔にできる仕事ということでは、夢が叶っているのかな」。
コロナ禍はイベントが中止になってキッチンカーも出番がなくなったが、巣ごもり需要用のお弁当販売でなんとか仕事を繋いだ。その状況も徐々に回復し、2023年6月からは、月に1度のマルシェも復活し夏休みには拡大版も開催することができた。「引き続き豊川市のPR活動をしながら、今後はキッチンカーの業者がより活動しやすくなるような環境づくりにも力を入れていきます」。