豊川市は2023年6月に市制施行80周年を迎えた。記念事業の一環として制作された豊川市プラネタリウムオリジナル番組「Lights of Toyokawa(ライツオブトヨカワ)」は、豊川市と宇宙との関わりを壮大なスケールで表現している。この記念番組のナレーションに抜擢されたのは、豊川市出身の俳優・タレントの小林亜実さん。その柔らかく、澄んだ声が、観客たちを包み込んでいる。
小林さんは、名古屋を拠点に活動する女性アイドルグループ「SKE48」の元メンバー。三姉妹の次女で、父親が地元のミニバスケットボールチームのコーチを務めるスポーツ一家だった。父親はとにかく勝負に厳しかったため、小学校のマラソン大会では優勝が当たり前。2位以下になると、姉妹3人でもう一度同じコースを走って競い直し、その中で順位を決めるという徹底ぶりだった。「だからこそ、優勝できた年は本当にうれしかったです」。小林さんはミニバスのほかにもスイミング、柔道、豊川市立西部中学校ではテニスに打ち込み、愛知県立国府高校で新体操部に入部。この部活が芸能界入りへの転機となる。中学時代にモデル経験がある1学年上の先輩との出会いだ。彼女に憧れ、それまで関心がなかった芸能界に興味を持った。「当時、AKB48がとても流行っていて。SKEのオーディションを知り、挑戦を決めました」。そして2010年、高校3年生の時に倍率約300倍のオーディションに合格。晴れてアイドルデビューを果たした。一方で、短大にも合格し、食生活について勉強。SKEの活動と両立させた。
SKEでは、『アイドルとはどうあるべきか』『どうすればファンの方々に喜んでもらえるのか』と常に考えて行動し、NHK紅白歌合戦にたびたび出演するなど活躍。そして2015年、もともと興味があったお芝居の道に進むべくグループを卒業した。「総選挙などメンタル的に大変なこともありましたが、強くなれたと思いますし、楽しい思い出もたくさんできました」。SKE在籍の5年間、自宅から名古屋まで電車で通いとおした。
卒業後は上京し、CMや舞台を中心に活動。さらにパン作りを特技とするフードスペシャリストとしても知られるようになった。そんな中、2022年に豊川市のプラネタリウム番組の仕事が舞い込んだ。SKEでは叶わなかった地元・豊川市での仕事。喜んで引き受けた。ナビゲーションをするにあたり、豊川の歴史や市内の企業のことなどを学んだ。2023年に入り、東京都内のスタジオで録音に挑んだ。豊川市プラネタリウム「ジオスペース」館とオンラインでつなぎ、職員が見守る中、映像の言葉に魂を吹き込んだ。「俳優としてきちんと感情を乗せることを大切にしているので、自分が納得できるまで何度もやらせてもらいました」。こうして完成した番組は、80周年記念事業の目玉のひとつとして、上映が続いている(2024年1月現在)。
「私の夢は、三河弁をしゃべる役を芝居ですること。まずは地元で撮影する映画などに出演して、豊川をPRしたいです」。