自然栽培された安心安全な無農薬野菜を収穫したその日に直接出荷、翌日着で新鮮な旬野菜が届ける「VEGIMO(ベジモ)」の宅配サービスは全国に利用者を持つ人気ぶりだという。そんなベジモの取り組みが生まれたきっかけは、代表を務める豊川市出身の小林寛利さんの実体験にあった。
「東京で会社勤めをしていたころ、実家の父親が定年退職後に家庭菜園を始めまして。もともと僕はジャンクフードが大好きでしたが、その畑で育った野菜を食べて、初めて野菜がおいしいと感動したんです。その後も帰省して畑の手伝いをするとすごく楽しくて、心と体が整う感覚があり、微生物も虫も草も共生する有機農業の素晴らしさにも気づきました」。
2008年、小林さんは脱サラして起業。その当時、世間では「儲からない、続けられない」と言われていた有機農業はみんなが幸せになる仕事だと信じて、豊川の畑でまったくの未経験からチャレンジした。会社員時代に教わった「価値があるものに必ず対価が得られる」という考えのもと、無限大の畑の価値をサービスにするため邁進している。
身土不二と地域密着にこだわる「ベジモ」は、鮮度抜群の露地野菜が配送されるだけでなく、野菜を食べる人が気軽に畑に行けるのも人気の理由。定期購入者の中には、子どもと一緒に野菜を畑に受け取りに来る人も。生産者は自分が育てた野菜をどんな人が食べているかを知り、コミュニケーションを取れる距離感でモチベーションが上がり、消費者との信頼関係も生まれている。
小林さんが「ベジモ」の創業時からずっと大切にしている、農業で実現したいことは「予防と多様性」。「有機農業や自然栽培の畑で土に触れ、深呼吸するだけで、体内に何億もの微生物や乳酸を吸い込み、人間本来の免疫力を高めて、健康のベースになる体が整っていきます」。2013年に障がい者就労継続支援事業所「ベジモファームB」の運営を開始。「生きる力を育てる」をテーマに、利用者とスタッフが二人三脚で採れたて野菜の出荷作業を中心に行い、時には畑作業や出張販売などのさまざまな仕事がある。
2021年から、豊橋の医療施設「豊橋ハートセンター」との共同事業として、介護予防通所サービス(デイサービス)「ハートケア」の畑「ハートファーム」を開設。共感する医療機関とともに、高齢者の健康づくりの農福連携サービスや、地域の人々が集まって楽しめる身近な農園作りを進めている。「僕自身が自信を持って未来の子どもたちに言える、理想的な品質とサービスで良い世の中にしていくために、これまで何度も壁にぶつかり挫折を繰り返してきました。新規就農時にも本当に多くの方にお世話になりました。当時、