2023年の正月にリニューアルオープンし、連日多くの利用客が訪れている「本宮の湯」。登山の名所で知られる「本宮山」の麓にある日帰り天然温泉だ。東三河の公共施設としては初めて、話題のフィンランド発祥のロウリュウサウナを導入し、これまで客層が薄かった若者たちも足を運ぶ人気スポットになっている。
リニューアルでは、もともとあったサウナに加え、若者たちの間で特に流行っている高温のアロマ蒸気が浴びられる自動ロウリュウサウナと、通常の水風呂より際立って冷たい強冷水深風呂を取り入れた。さらに、露天風呂には、マッサージバスを新設し、ひとりでゆったり入れるつぼ湯を増設。キッズコーナーがあるイートインスペースをもうけるなど内容を充実させ、よりバラエティに富んだ、老若男女が楽しめる温泉施設へと生まれ変わった。
オープン当日の1月2日。開館時間の午前10時前にはすでに長蛇の列ができていた。ロウリュウサウナを目当てに訪れた初見のお客さんが目立ったが、改装工事に伴う4カ月の休業の間、開業を待ちわびていた常連のお客さんたちも多く訪れた。「『ようやく開店してくれたかん』『混むのはわかっとったけど、来ちゃったわ』と声をかけてくれました」と話すのは、支配人の古井光也さん。2日は約2600人、3日は約2200人、4日は約2700人が詰めかけた。
2020年に発生した新型コロナウイルス感染症。本宮の湯ではこの3年間の年間来場者数が、通常の3分の2の約20万人に落ち込んだ。休館、時短を繰り返し、ようやく通常営業になっても、出控える人たちが多く、低迷は続いた。「お客さんよりも従業員の数が多いなんていう日もありました。正直切なかったですね。長かったです。でも、リニューアルの計画は以前から決まっていたことでしたし、きっとお客さんたちは戻ってきてくれるという確信はありました」と、古井さんは振り返る。「コロナ禍は来場者が一日平均500人に満たなかったのが、リニューアルオープンの時は久々にたくさんのお客さんが来たので、逆に戸惑っちゃいました」。
本宮の湯は2002(平成14)年、豊川市と地元の一宮商工会、JAひまわりが共同出資し、株式会社本宮として開業。「森の灯台」をテーマに建てられ、高い塔が印象的だ。浴場は、森の湯と空の湯の2つがあり、1週間ごとの男女入れ替わり制となっている。
開業当初は、大浴槽とサウナ、ジェットバス、露天風呂などの施設があり、市内外から天然温泉を楽しむ人たちが大勢訪れていた。オープン10周年の2012(平成24)年には、保湿や美肌に効果があるというナノ水や、当時大流行していた炭酸泉を露天風呂に完備。翌年には年間来場者数が、過去最高の33万人を記録した。その後も、とよかわバラにちなんだイベントや施設の子どもたちの招待をはじめ、さまざまな行事やサービスを展開し、新型コロナウイルス感染症が発生するまでは年間来場者数が30万人前後で推移していた。一方、以前から利用者の年齢層が高いという課題があり、「幅広い世代に利用してもらうことが不可欠」と、20周年の2022(令和4)年に合わせて老朽箇所の工事とリニューアルを行った。
現在、本宮の湯では一日平均900人、週末は両日で平均3000人が訪れている。このペースでいけば、2023年の目標の年間30万人は実現できそうだ。そんな中、4月8日には累計入館者数600万人を達成している。
古井さんは「従業員一同協力し合いながらもっとお客さんを増やしていきたいと思っています。接客指導などをしっかりしていきます」と意気込んだ。